BI(ビジネス・インテリジェンス)は、適用領域の専門的な知識・スキル、固有のデータ分析技法によって価値を生み出しますが、一つのIT利用分野と見たときに、以下に記すようないくつかの特徴を持ちます。これらはBI利用局面、適用業務領域や分析対象データの特性などとも関係がありBI全般の特徴と言い切れませんが、BIの可能性や方向性に関する参考情報としてご覧ください。
(※ 本来このような文章を記すときは、”BI”の定義を先にするべきですが、ここでは敢えて定義を省略します。以下のBIについては“所謂BI”程度のイメージでお考えください。)
たとえば、最近のネット利用の広がりでPCや携帯電話からのウェブ・アクセスのデータ量は膨大になっています。さらに時々刻々の位置情報をやり取りするGPSデータも巨大化し様々な場面で利用可能性は高まっています。金融サービスに関わるデータも広く考えれば、電子マネーやクレジットカードとの関連で、莫大な量のPOSデータまで含まれるかもしれません。これらは全てBIの分析対象になり得ます。またITシステムに保存可能なデータ量も飛躍的に増大しており、Hadoopに代表される大規模データ管理処理ソフトにも大きな進展が見られます。
システム科学の世界では、以前から“情報の爆発”ということが言い続けられてきました。情報をふるいにかけて取捨選択することがますます重要になり、それがGoogleのような検索エンジンやFacebook, ミクシィなどのSNSの普及・成長の背景と考えられ、同時にBIが求められる背景でもあります。
蓄積された膨大なデータを金脈に見立て、そこから金銀財宝を掘り出す技術としてのBI/データマイニングもソフトウェア・パッケージ化されてきました。データを入力しさえすれば何がしかの結果が簡単に得られますが、「手法ありき」、「ソフトありき」からのアプローチでは、いくらデータが大量にあっても価値発見がむずかしいことは言うまでもありません。
伝統的なシステムが扱ってきたデータは、数値や文字が一定の形で構造化されたものが中心でしたが、最近は生の文章などテキスト・データが構造化されないまま蓄積され始めています。データ源は、メール、コールセンターでの対話内容、ネット上の各種情報などで、音声、イメージ/映像などのデータ形式も含まれ、CRM、ウェブページ・モニタリング、市場調査などでの利用が期待されています。
システム的には、従来からの関係データベース・ソフトもこれらに対応し、CMS(Content Management System)などネットを意識したソフト基盤も提供されています。
BIの技術としてはテキストマイニングが進化を続けていますが、課題も残されています。例えば、ネットでの悪い風評をいち早く察知して対処するために膨大なテキスト・データを分析する場合、ネガティブ情報を正確に把握する必要があります。ネット独特の言い回しや表現、皮肉・当てこすり、自社についてのことかどうか等、単純に単語を抽出して分類するだけではうまく行かず、未だテキストマイニング利用には限界があるため、人口知能(AI)の応用などと併せて今後のイノベーションが期待されるところです。
たとえばカードの不正利用チェックは顧客カードの決済前に即時に行う必要があります。不正利用者の行動パターンまで取り込んだチェックの仕組みを構えるならば、「直前に少額利用でカードの有効性を確認した後の換金可能な高額の物品購入は危ない」のようなロジックを動かす必要があり、BIによる分析結果の実装においてリアルタイム処理が必要です。さらに利用するBI手法によっては、実際のトランザクションから実装システムの学習機能をタイムリーに働かせる必要もあり得ます。
金融業界で“今日データを蓄えて明日に分析する”のでは間に合わない問題は、為替の動向、株式の取引パターン、金融に絡むニュース・ヘッドラインのトラッキングなど多数あります。
アプリケーションに特化したソフトも数多く存在しますが、汎用的な分析ソフトであるSASやS-PLUSなども実装のためのruntimeモジュールを用意しています。
「見える化」は様々な分野で以前から強調されてきました。BIの分野でも当初から色々な視覚化の工夫がなされていますが、最近は一層の高度化が追求される傾向にあります。
巧みな情報デザインのナビゲーションによって、データや情報を分かりやすく訴求させるために多様な手法が試みられています。ニューヨークタイムズ記事によれば、スエーデンのvisual analyticsの研究者(Dr.Rosling)は「統計(Statistics)は今や最も魅力的(sexiest)なテーマだ」と話しています。
このNYタイムズ記事には、ベンチャー企業による試みとして営業部門の業績のツリー・マップ表示例なども紹介されています。
具体的なvisual analyticsの事例は、Chatterによるたくみs コラボレーション (会員のみ)にログインしBI分科会をご覧ください。
以上、4つの一般的なポイントを示しましたが、詳細に見れば他にもポイントはあると思われ、また個別のBI分析手法に関わるIT視点もあり得ます。BI適用分野によっても異なる視点が考えられます。上記は一つの参考情報としてご覧ください。
参考
The New York Times. Published: April, 2, 2011, “When the Data Struts Its Stuff”
CS